研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な全身性自己免疫疾患である。発症の根本的な原因はもとより病態についても不明な点が多い。そこで本研究ではSLE患者に特徴的な光線過敏症の発症の分子メカニズムを明らかにする。これまでに我々は、SLE患者21人と健常人45人の末梢血で発現している遺伝子について、DNAマイクロアレイによる網羅的解析を行った。興味深い事に主要なDNA修復酵素であるXPD(ERCC2), XPG(ERCC5)がSLE患者において、顕著でかつ高い信頼性を持って低下していることが明らかになった。さらに解析を進めた結果、ミトコンドリアDNAにコードされる分子群(ATP6, COX1, COX3, CYTB, ND1, ND2)の有意な低下がSLE患者群で見出された。XPD, XPGはATP依存性のDNA修復酵素である。そのため、ミトコンドリア分子群の発現低下は、XPD, XPGの機能低下をもたらす事が予想される。XPD, XPGは色素性乾皮症、コケイン症候群、硫黄欠乏性毛髪発育異常症などの責任遺伝子である。また共通病態として光線過敏症を発現する。をそこで、これらの分子群について、光線過敏症との関連について検討した。 今回、光線過敏症の病歴があるSLE患者群(19人)と、病歴のないSLE患者群との間で、ミトコンドリアDNAにコードされる遺伝子群と、DNA修復酵素との遺伝子発現の比較をDNAマイクロアレイで解析した。いずれの患者群でも、ミトコンドリア遺伝子群とDNA修復酵素の低下は見ちれた。しかし光線過敏症の病歴を有する患者と有さない患者との間で、有意差は認められなかった。今後、光線過敏症が生じている状態と落ち着いている状態とを比較する必要がある。また、皮膚組織での検討が不可欠である。現在、皮膚組織からのpurityの高いRNA抽出の検討を行っている。
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