研究課題
基盤研究(C)
末期心不全に対する治療として、多能性幹細胞(ES /iPS細胞)を用いた幹細胞治療を確立するべく、疾患動物モデル(虚血性心筋症モデル)を用いて前臨床段階の移植実験を行った。ます初めに、ラット亜急性期心筋梗塞モデルに対し、フローサイトメトリーの手法により分化誘導・分離したマウスES細胞由来心筋細胞の注入による移植を行ったが、効果は限定的であり、注入移植による生着効率の不良がその原因と考えられた。その後移植効率を高めるため、温度感受性培養皿(UpCell, セルシード社)を用いたES細胞由来心筋細胞シート移植実験を行った。その結果、心機能増悪を抑える効果を認め、さらにその血管新生を中心とした左室リモデリング抑制メカニズムを解析した結果、終末分化した心筋細胞が著明な血管新生その他のパラクライン効果を有することがわかった(Masumoto H, Ikeda T et al, Stem Cells, 2012)。さらにヒトiPS細胞を用いた心筋細胞シートのラット亜急性期モデルへの移植を行い、同様に血管新生を中心としたメカニズムによる心機能回復効果を認めた(AHA 2012 abstract #11848)。多能性幹細胞(ES /iPS)細胞を用いた心臓再生治療において、治療効率を上げうるひとつの方法として細胞シートを用いた方法が有用である可能性があることを今回明瞭に示すことができた。さらにヒトiPS 細胞由来心臓組織シートを用いて良好な心機能回復効果を得られたことから、iPS細胞を用いた心臓再生研究を、さらに臨床応用に近づけることができたと考えられる。
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