研究概要 |
【目的】脳小血管病変は高血圧を背景に穿通枝においてヒアリン化を伴う細動脈硬化により引き起こされる.一方脳小血管病変に慢性腎臓病の合併頻度が高いことから脳腎連関が注目されている.遺伝性脳小血管病である CARASIL は HtrA serine peptidase 1 変異により TGFβ1 シグナル活性が亢進,血管内皮細胞の変性を生じることが明らかにされ,その脳小血管の病理像は高血圧性細動脈硬化に類似していることが報告された.一方 TGFβ1 と動脈硬化の関連については, TGFβ1 は高血圧の促進因子であるとされるが,動脈硬化に対しては抑制因子とする報告もあり,その役割にはまだ一定の結論が得られていない.そこで我々は片腎摘出と食塩負荷による高血圧モデルラットを用いて高血圧による腎および脳小血管病への TGFβ1 の関与を検討した.【方法】片腎摘出 1 週後のラットに deoxycorticosterone(DOCA)と 1%食塩水を 4 週間投与した(DOCA-salt)。1 週ごとに tail-cuff 法にて収縮期血圧(SBP)を測定した。大腿動脈に挿入したカニューレから観血的に覚醒下平均動脈圧(MAP)を測定後、腎臓、胸部大動脈、頸動脈、脳組織を摘出し、また脳組織からデキストラン法で脳小血管を分離し抽出し、各臓器・血管における TGFβ1 発現を ELISA 法、Western blotting 法にて検討した【成績】DOCA-salt において経時的に SBP、MAP が有意に上昇した。DOCA-salt 群の 3 週目では4 週目に対して腎臓(0.06 ± 0.005 ng/mg vs. 0.16 ± 0.012 ng/mg)、胸部大動脈組織(0.59 ± 0.07 ng/mg vs. 2.64 ± 0.45 ng/mg)において TGFβ1 量が増加していた。頸動脈と脳では3 週目には(0.019 ± 0.004 ng/mg vs. 0.022 ± 0.003 ng/mg)と有意な変化は認められなかったが、4週目には 0.039 ± 0.011ng/mg と有意に上昇したが、胸部大動脈と比較するとその増加は小さかった.【結論】高血圧モデルラットにおいて TGFβ1 は腎・大動脈で先行して発現が増加し,その後頸動脈・脳で増加を認める.
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