研究課題
基盤研究(C)
本研究では癌標的分子であるHB-EGFの特異的抑制薬であるCRM197の臨床応用に向けて、CRM197の抗腫瘍効果を期待することのできるHB-EGF以外の遺伝子情報を明らかにし、CRM197適応基準判定のための診断的ミニアレイの開発を目的とし、平成22年度はHB-EGF発現亢進に関わる遺伝子群を同定した。そこで、本年度はCRM197と併用する抗癌剤であるパクリタキセルを用いてCRM197とパクリタキセルの併用療法の感受性に関わる遺伝子群の探索を行った。まず、shRNAライブラリー導入細胞をヌードマウス皮下に播種し、腫瘍形成後にCRM197及びパクリタキセルを投与した。両薬剤投与後にも増大してきた腫瘍からRNAを抽出し、薬剤を投与していないヌードマウスの皮下腫瘍から抽出したRNAをコントロールとしてcDNA発現アレイによる解析を行った。今回抽出した遺伝子群と平成22年度に同定したHB-EGF発現亢進に関わる遺伝子群を比較し、CRM197とパクリタキセルの併用療法の感受性に関わる遺伝子群としてEGFRやHER2、AKT、PPARγや他の転写因子(特許のため遺伝子名は伏せさせていただく)が抽出された。最終的にHB-EGF高発現卵巣癌細胞株に対して、上記で抽出された遺伝子の発現を抑制し、CRM197及びパクリタキセルに対して抵抗性を示すことができた遺伝子をCRM197とパクリタキセルの併用療法の感受性に関わる遺伝子として同定した。本年度までの成果とヒト卵巣癌組織及びCRM197の第II相臨床試験症例の腫瘍細胞の遺伝子情報を実際の治療効果と併せて解析することにより、CRM197適応基準判定のための診断的ミニアレイを作成が可能となる。
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