研究課題
基盤研究(C)
培養口腔粘膜上皮シート移植は瘢痕性角結膜上皮症に対する眼表面再建術のひとつで、両眼性の角膜輪部機能不全に対しても拒絶反応のない自己組織由来の培養上皮シート移植が可能であることから非常に臨床的有効性が高い外科的治療法である。培養口腔粘膜上皮シートには羊膜を基質としたものと基質をもたないものがある。臨床経過中に移植した培養上皮シート下に視力低下の原因となる血管新生を認めることがある。この臨床所見は、基質を有する培養口腔粘膜上皮シート移植後にその傾向が高いことから、基質(羊膜) の有無が発症機序に関与している可能性が考えられた。まず最初に培養口腔粘膜上皮シートでの血管新生促進・抑制因子の発現と基質の有無との関係を検討した。mRNA、蛋白レベル共に、血管新生促進・抑制因子発現と基質の有無との間に関連は認めなかった。次に、培養口腔粘膜上皮シート移植後の角膜移植時に摘出された角膜組織の病理組織学的検討を検討したが、症例ごとの眼表面の微小環境の影響が強く、基質の有無による影響を確認することは困難な状況であった。そこで、家兎口腔粘膜から作製した培養上皮シートを角膜輪部機能不全家兎モデルに移植し、基質の有無による影響を検討した。基質のない培養口腔粘膜上皮シートは角膜実質との接着が良好で平滑な眼表面が得られていたのに対し、基質がある培養口腔粘膜上皮シート移植眼では移植上皮シートと角膜実質との接着性が低く、上皮シート下への上皮細胞や周辺からの線維組織を伴う血管侵入が観察され、ヒトの臨床所見で認められた血管侵入が家兎モデルでも同様に観察された。以上のことから、移植した培養口腔粘膜上皮シートと角膜実質との接着性が、移植上皮シート下のスペースへの細胞浸潤、血管侵入を引き起こす可能性が示唆された。
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Ophthalmology.
巻: 118 号: 8 ページ: 1524-30
10.1016/j.ophtha.2011.01.039
Ophthalmology
巻: (In press)