研究概要 |
個人のカリエスリスクによって材料によるう蝕抑制効果に相違があることが予測されることから,対象患者を特定した新しい製品の開発が期待できる.本研究では,自動pHサイクル装置を用いて種々のカリエスリスクを設定し,う蝕進行を把握するとともに,PIGE/PIXE装置を用いて歯質へのフッ素およびストロンチウムの移行を調べ,各々のカリエスリスクに有効なう蝕抑制効果を発揮する材料学的特性を明確にし,フッ素含有材料の開発指針の確立を目指してきた. 本年度は以下の結果を得た. 1)フッ素製剤併用時における各種フッ素含有材料のう蝕抑制効果の検討:日常使用されているフッ化物含有歯磨剤単独と,小中学校でう蝕予防を目的に実施されているフッ素洗口をフッ化物含有歯磨剤と併用した場合を比較すると,う蝕抑制効果に相違がなかった.このことは,歯磨剤単独でも十分な効果が期待できることを示している.また,フッ化物含有歯磨剤の1日2回使用を想定すると,充填直後に認められた各種フッ素含有材料間でのう蝕抑制効果の相違が,充填1年後では認められなくなった. 2)材料から健全歯質へのフッ素取込み量の測定:歯質とフッ素の結合状態を検討するために,KOH浸漬後に残存するフッ素は歯質と結合していると考えられることから,1MKOHに24時間浸漬振盪後のフッ素取込み量を測定した.その結果,使用した材料1種を除いてすべてで,KOH処理後,フッ素取り込み量は減少する傾向がみられた.このことから,従来測定したフッ素取り込み量には,歯質に付着しているCaF2が含まれる可能性が示された. 3)ストロンチウムとう蝕抑制効果との関連性の検討:ストロンチウムの検出法を再検し,感度の上昇を期待してビームエネルギーを1.7MeVから3.0MeVに変更して測定したところ,以前にはストロンチウムの歯質への移行を検出できなかった材料においても,移行を確認できた.
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