研究課題
基盤研究(C)
本研究は、部位特異的な骨の力学的刺激応答の観点から骨粗鬆症とその治療法を再検討するのが目的で、具体的には下肢・下顎・頭蓋骨の細胞の力学刺激応答の差異、情報伝達経路の異同を明らかにした。力学特性に対応した骨粗鬆症治療法が必要であると考えられる理由は、宇宙滞在やベッドレストの状態で荷重骨である大腿骨は除荷により毎月約1%もの割合で萎縮する一方、非荷重骨が変化しないことから自明である。マウス下肢・下顎・頭蓋骨の細胞を刺激する方法としては、低出力パルス超音波(LIPUS)刺激を選んで細胞膜インテク゛リンに着目し、アクチン線維を介してリモデリングとアポトーシスを支配するメカニズムを検討した。その結果、下顎骨骨芽細胞が、特異的にα5β1インテグリン依存性の分化応答並びにアポトーシスの阻止とリモデリング促進を示すことが明らかになったため、その応答の情報伝達経路マップを作成することを優先した。下顎骨の細胞の情報伝達はα5β1インテグリンとPI3K/Aktに依存しα5β1の中和抗体でブロックされること、RANKL/OPG、Bcl2/Baxの比率は、それぞれ下顎骨特異的なLIPUS刺激依存性のリモデリング、サバイバルを示すこと、運動負荷のない頭蓋骨では、下顎骨と違いそれらのアナボリックな応答は殆ど見られないことを示すことができた。胚葉性の由来が同様であるにも拘らず、細菌の影響下日常的に大きな力学的負荷を受ける顎骨の結果は全く異なり、進化の過程で顎骨は骨の恒常性を保つため、インテグリンをゲートキーパーとする機能を獲得したとする仮説を報告した。2011・2012年度には、Porphyromonasgingivalisを塗布して顎骨壊死のモデルラットを作成し、組織レベルでの検証を行った。Bisphosphonateによる骨壊死も顎骨特異的であるが、抜歯処置後上皮と抜歯窩直下歯槽骨で遅延した修復が、LIPUS照射(3週間)群では病態が正常化され、ラマン分析の結果からも骨質においてLIPUS非照射群との間に有意な差が得られた.
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