研究概要 |
結晶を構成している金属イオンはよく電子スピンによる磁気モーメントをもつ(例えばFe2+,Co2+,Ni2+,Mn2+等)。磁気イオンが三角格子または正四面体やカゴメ格子の配置を成す場合、幾何学的フラストレーションによって新奇な電子スピン量子相が期待され、近年物性物理学の大きな関心になっている。近年我々は2005年に天然鉱物結晶Cu2Cl(OH)3(clinoatacamite)が新しい幾何学フラストレーション磁性物質であることを発見して以来、水酸塩化物シリーズにおける新奇物性を集中的に研究してきた。本研究において上記の水酸塩化物系物質が磁性転移に伴って誘電的異常をしめすことを見出した。磁性を示した水酸塩化物において普遍的に磁気・格子・誘電の相関を示すことを発見した。更に一部の物質において強誘電性と考えられた性質を観察した。磁気秩序のスラストレーションによって、マルチフェロ性質が期待できることを本研究が示した。主要成果はPhys. Rev. B 2013年5月号にて論文公表した[Phys. Rev. B 87, 174102 (2013)]。
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