研究課題
挑戦的萌芽研究
熱伝導の超伝導化への手がかりを掴むべく、カップスタック型カーボンナノファイバ(CSCNF)における「散乱されにくいフォノン」に関する実験的研究を行った。既に理論的研究からは、CSCNFはその1次元調和振動子に類似した構造ゆえに試料の長さに応じて熱伝導率が増加することが予測されている。これを実証するためには、純度の高い1本の試料の長さを変えて計測する必要がある。本研究では当方が独自に開発した熱線型のナノ熱センサに加えて電子線誘起堆積法(EBID)によるヒートシンクの延長技術の確立に挑んだ。まず、純度を高めるためのアモルファスカーボンの除去に関しては、供給時に付着している分については大気中熱酸化だけで完全に除去可能であることをHRTEMによって確認したが、その後のEBIDが不純物として作用する可能性の排除と試料の再利用を目的として、サブミクロンオーダーで局所的に堆積物を除去するためのオゾン導入実験を行いそのエッチングレートを見積もることができた。次に、試料の準備から熱計測までの全てを既設のSEM内で実施するために、ペルチェ素子を用いたSEM用温度制御ステージを整備した上で新たに高精度マルチメータを導入して実験を行ったところ、ヒートシンクとの間の接触熱抵抗の不安定さに由来すると考えられる信頼性の低いデータを排除することができなかった。そこで、接触抵抗の改善が期待できる前躯体としてPt(PF3)4を試みたが今のところ満足できる結果には至っていない。このように最終目標までは到達できなかったものの、本研究ではナノ材料1本の熱物性の詳細解明のための実験技術に関して基本的知見と方向性を得ることができたと考えている。
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J.Phys.: Condens.Matter
ページ: 65403-65403
Proc.International Heat Transfer Conf.IHTC14, August 8-13, 2010, Washington, DC, USA