研究概要 |
本研究は,行動地理学と認知心理学の成果に基づいて,空間的思考の構成要素を体系化し,その育成のためにGISを活用する方法を検討した。3つのサブテーマに分けて研究を行った結果,次の知見が得られた。(1)空間的思考の構成要素の体系化については,空間概念,空間表現,空間的推論の3要素と内容,および空間的リテラシー,空間的能力など類似する概念との関係を整理した。また,方向感覚質問紙と空間的思考に関する質問紙調査を行い分析したところ,これらの能力はある程度独立したいくつかの因子で構成されることがわかった。(2)空間的思考に関わる教科内容については,大学入試センター試験における過去の地形図読図問題の内容を分析し,学習指導要領の改訂に伴い,地理教育で求められる知識や思考力が変化してきたことがわかった。また,大学入試センター試験の問題から地形図読図問題を選定し,発話思考法による解答過程を分析したところ,出題内容によって解答過程が異なることが明らかになった。(3)空間的思考の育成のためのGISの活用については,地方行政でのGISの利用と空間的思考の育成を目的とした教材を作成し,自治体職員向けGIS講習会でその有効性を検証した。しかし,空間的思考の教育にとってのGISの効果は明確にできなかった。
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