研究概要 |
LED光源を用い,マメ科植物であるクズ(Pueraria lobata)のカルスを大量培養できる方法を確立した.酵素溶液で単細胞化したクズの細胞をエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVOH)溶液(溶媒:イソプロパノール/蒸留水=70/30wt%)に分散させた.これを紡糸液として電界紡糸を行ったところ, EVOHナノ繊維間に植物細胞が固定化された不織布を作製することができた.エバンスブルー染色により,ナノ繊維に固定化されたクズ細胞は生体機能を保持していることを確認した. 糖が存在しない培養液中にクズ細胞を分散させ, LED光源下で一週間培養を行った.一週間後の培養液を液体クロマトグラフ質量分析により調べたところ,グルコースとスクロースが検出された.これは光合成で生産された糖が細胞外に分泌されることを示唆している.よって,クズ細胞を高分子ナノ繊維に固定化した場合,光合成により生産された糖をナノ繊維と通して回収できる可能性を確認することができた. EVOHナノ繊維不織布に固定したクズ細胞を培養液中に分散させたが,培養液中から糖を検出することができなかった.このことから(1)さらに多くの細胞をナノ繊維に固定する,(2)さらに光合成能が優れた細胞を大量培養してナノ繊維に固定する必要があることが考えられた.
|