研究概要 |
本研究では,固定壁上の液滴を電場により高速移動させる手法に関連し,申請者が初めて考案したエレクトレットを電圧源として用いるL-DEPOE (Liquid Dielectrophoresis on Electret)を対象として,研究を勧めた. 1)液滴操作試験ベンチの試作・液滴運動の計測 まず,液滴の流体力学的/熱的境界条件および電気的境界条件が明確となる液滴操作試験ベンチをマイクロマシン技術によって試作し,上下の極板間隔電極配置,作動流体の誘電率抵抗率,表面処理などが液滴の移動速度,振幅などに与える影響について,顕微鏡下のデジタル画像計測により定量化した. 2)液体中で動作可能なエレクトレット膜の開発 本研究で対象とするデバイスでは,液滴とエレクトレット膜が直接接触するため,電荷のリークが,長時間の安定動作上の課題である.そこでエレクトレット膜に3次元ナノ構造を作り込むとともに,軟X線を用いてエレクトレット膜の内部に電子を打ち込むことによって,液体中でも安定なエレクトレット膜の形成を図った. 3)高速移動のための挑撥液面の開発・液滴操作プロトタイプの試作 初期的なデバイスによる液滴操作の結果,シリコンオイルの液滴を移動させることはできたが,移動速度は極めて遅く,またヒステリシスを持つ.従って実際のデバイスに応用するには,表面張力由来のダンピングカの低減による移動速度向上が必要である. 本研究では様々な種類の液体に適用可能な液滴操作方法の開発を目指したが,水だけでなく表面張力の小さな有機溶媒に対しても大きな接触角を示す超撥液面の開発例は極めて少ない.そこで,ナノリソグラフィ技術により3次元サブミクロン構造を形成し,有機溶媒に対してもCassie-Baxtor状態を保つ微細加工面の設計法の確立とその評価を行った.具体的には,電場が重畳する場でCassie-Baxtor状態を安定に保つため,サブミクロン構造の試作を行った.
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