研究概要 |
電析法は簡便な成膜法としてメッキなどで広く工業的に用いられるが,原子レベルで構造制御が可能な高度な結晶成長法とは通常は考えられていない.しかし,電析条件によっては,異種単原子層を順次,交互に電析することができ,電析法でも原子ステップ単位で結晶構造の制御が可能で,安定相ではない層状構造物質の創製できる可能性がある.本研究では,安定相としては閃亜鉛鉱型構造を持つ半導体CdTeのカソード電析により,Cd単原子層,Te単原子層を交互に積層し,金単結晶基板上に非平衡な層状化合物の作製を試みた.金(111)面を基板とすると,異種単原子層が交互に電析するが,6角原子配列を保つため,安定相の閃亜鉛鉱型構造となった.安定相のため,数μmにわたって単結晶として結晶成長した.金(001)面を基板とすると,10%程度の大きな格子ミスフィットにもかかわらず,成長初期にエピタキシャル成長が起こり,四角配列原子層の交互積層に対応するL1_0型構造が形成された.しかし,この結晶成長は長く続かず,優先成長方位の<111>柱状晶に阻害され,高々,100nm程度で成長が阻止されてしまう.電析電位や浴組成の関数として,L1_0型構造が結晶成長する条件を探索したが,100nm程度の成長が最高値であった.他の閃亜鉛鉱型構造を取る化合物半導体についても同様の実験を行ったが,ZnTbでL1_0型構造の僅かな成長が見られたものの,CdSe, ZnSeでは安定相しかえられなかった.これらの金基板との格子ミスフィットを考えると,非平衡相L1_0型構造の形成には5%を越える大きな格子ミスフィットが必要であると結言できる
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