これまで、20種類の天然(L)型アミノ酸でランダムに構成したペプチド集団(ライブラリー)を合成し、その中から"標的分子に対して特異的に結合する特殊なペプチド(ペプチドアプタマー)"を選択する「安定型リボソーム・ディスプレイ法」め開発に成功してきた。そこで、これまでに得られた知見を活用し、標的分子に対する特異的結合性とプロテアーゼ耐性の機能を発現する「非天然型ペプチド」を創出する「新規リボソーム・ディスプレイ法」の基礎開発を目指した。 本研究課題では、まず、非天然型アミノ酸を組み込んだペプチドおよびペプチドライブラリーを合成するための新たな基礎技術の開発に取り組んだ。具体的には、非天然型アミノ酸を化学的に修飾したtRNA合成とそれらで再構成した無細胞タンパク質合成系の新規構築である。そして、今回開発した新たなタンパク質合成系の利用により、非天然アミノ酸を部位特異的に導入した人工ペプチドを試験管内にて合成することに成功した。これらの成果の一部は、国内シンポジウムや国際会議などにおいて発表するに至っている。さらに現在は、このタンパク質合成系を利用した新規リボソーム・ディスプレイ法を独自に確立するため、特許申請を視野に入れた開発段階へと移行している。それゆえ、近年、世間を騒がせている新型インフルエンザなどのウイルスの感染機能を阻害するような「非天然型ペプチド」を迅速に創出する新技術として確立する目途が立った。
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