研究課題
挑戦的萌芽研究
ディスコバ生物群は、単細胞真核生物からなる単系統群であり、4つのサブクレード、即ちヘテロロボサ類、ユーグレノゾア類、ヤコバ類、ツクバモナディダ類から構成される。ヤコバ類の一種であるReclinomonas americanaのミトコンドリア(mt)ゲノムはもっとも原始的な遺伝子構成を保持しているため、R. americanaを含むディスコバ生物群はmtゲノムの初期進化を考察する上で極めて重要な生物種であると考えられている。ツクバモナディダ類はTsukubamonas blobosa(TKB055株)の発見と共に2011年に確立されたが、この時点ではディスコバ生物群内部でT. globosaの系統的位置は確定できなかった。本研究では、次世代シークエンス技術を用いたT. globosaのトランスクリプトーム解析を行い、そこから生成した配列データを基に157個のタンパク質(アミノ酸)配列をふくむ巨大アライメントを作製した。この157タンパク質アライメントによる系統解析では、姉妹群となるヘテロロボサ類とユーグレノゾア類の基部からT. globosaが分岐した。また、我々はT. globosaのmtゲノムを完全解読することに成功した。T. globosa mtゲノムは、全長48,463塩基対(AT含量66.2%)の環状分子であり、52個のタンパク質と29個のRNAをコードしていた今後157タンパク質系統解析により解明したディスコバ生物群内部の系統関係をもとに、T. globosaのmtゲノムと他のディスコバ生物のmtゲノムとを比較することにより、この生物群内部でのmtゲノムにおける遺伝子構成の進化を精度よく推測することが可能となる。
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