研究課題/領域番号 |
22658012
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
植物病理学
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐野 輝男 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30142699)
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研究分担者 |
柏木 明子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (40362652)
種田 晃人 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70332492)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
3,550千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 450千円)
2011年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2010年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 葉圏微生物 / 根圏微生物 / 大規模塩基配列解析 / 自然栽培 / 病害虫発生抑制 / リンゴ葉圏微生物 / 病害抑制 / 微生物多様性 / マクロアレイ診断 / 次世代シークエンス解析 / バイオインフォマティクス |
研究概要 |
無農薬・無肥料(堆肥含む)の自然農法で30年近く継続して栽培管理されているリンゴ樹の一部に顕著な病害虫発生抑制現象が観察される事例が知られている。長期間の自然農法栽培実践の過程でリンゴ樹に未解明の獲得自然免疫現象が生じて病害虫耐性を獲得した可能性が示唆されているが、科学的な検証が必要である。本研究はこのリンゴ園を含む自然農法栽培園と慣行防除園の合計4園を対象として、リンゴ樹葉圏と根圏の微生物群の多様性とその特徴を次世代シークエンサーによる大規模塩基配列解析で分析し、微生物群の多様性とその適応・進化の観点から、微生物種の存在によって宿主植物が自然免疫を獲得する可能性について科学的な解析と評価を試みたものである。 まず葉圏の真菌では、全ての園地で菌類はAureobasidium pullulans、Cladosporium tenuissimum、Cystofilobasidium macerans、Cryptococcus victoriaeなどが生息し、自然農法栽培園ではそれに加えてVenturia inaequalis(黒星病菌)、Alternaria mali(斑点落葉病菌)、Diplocarpon mali(褐斑病菌)等の病原菌も検出された。病害虫発生抑制現象が見られる自然農法栽培K園では他の3園で最優占種であったAureobasidiumが有意に少ない特徴が見られた。K園の最優占種はCladosporiumと病原菌のVenturiaであったが、慣行栽培園と類似した少数の微生物種(2-3種)が寡占するパターンを示した。一方、2年前にK園を模倣して自然農法栽培に転換したばかりのMS園ではより多数(4-5種)の微生物種が拮抗して生息していた。葉圏の細菌は、どの園地でもSphingomonas echinoides、Methylobacterium radiotolerans、Pseudomonas syringaeなどが優占して生息していた。各園地とも6月の細菌類生息量は極めて少なかったが、自然農法栽培2園では8月に種数と生息量が20倍以上に増加し、慣行栽培園ではほとんど変化しなかった。慣行栽培園では化学農薬散布により細菌の生息が大きく制限されている状況が明らかになった。自然農法栽培2園(K園とMS園)の8月の細菌種の多様性を解析した結果、門或は属のレベルで多様度には大きな違いは見られず、生息する細菌類の多様性だけで病害虫発生抑制を説明できないことが判明した。個々の種に注目すると、K園ではPseudomonas属、MS園ではPantoea属の生息量が有意に豊富であった。 次に根圏の真菌では、自然農法栽培K園で50属、慣行防除O園で55属が検出された。K園ではEmericella、Fusarium、Mortierella、Cordyceps、Leohumicolaの順に、O園ではFusarium、Cryptococcus、Dipodascus、Leohumicola、Mortierellaの順に多数検出された。根圏細菌では、K園で327属、O園で356属が検出され、K園ではNirospira、Bradyrhizobium、Cupriavidus、Burkholderia、Pseudomonasの順に、O園ではNirospira、Bradyrhizobium、Ktedonobacter、Bacillus、Methylosinusの順に多数検出された。真菌、細菌共に優占種には明らかな違いが認められ、慣行防除O園の種類が若干多様であった。 調査リンゴ園に自生しているナズナを採集し、ポリA-RNAを調製して次世代シークエンサーによる大規模塩基配列解析を行ない、得られたデータをシロイヌナズナDNAデータベースに登録された遺伝子と照合して、自然農法栽培K園と慣行防除園間における各遺伝子の発現頻度の違いを可視化するプログラムを試作した。
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