研究概要 |
人工リンパ節移植技術を簡便化するために,単に二次リンパ組織移植(SLOTs)を行ったマウスの免疫能について解析を行った。NP-OVAを抗原として免疫したマウスから採取したリンパ節をSCIDマウスに移植した後,追加免疫した後の抗体産生量を調べた。その結果,SLOTsを行ったSCIDマウス(SLOTs-SCIDマウス)の血清中に,通常の免疫操作を行ったマウスに比べ,20~100倍以上高い抗体産生が認められた。この結果は,SLOTs-SCIDマウスの脾細胞を用いたELISPOTでも抗体産生細胞が100倍以上増加していることから確認された。SLOTsの際,SCIDマウスではなく,正常マウスを用いたところ,この抗体価の上昇が観察されなかったことから,SLOTsによる抗体価の上昇には,移植する宿主においてリンパ球が存在しない状態が必要であることが示唆された。次に移植を行う二次リンパ組織として体表リンパ節の代わりに肺縦隔リンパ節や鼻粘膜リンパ節といった粘膜付属リンパ節を用いたところ,IgG型抗体の代わりにIgA型抗体が大量に産生されることが明らかになった。また,H1N1不活化インフルエンザウイルスを免疫したSLOTs-SCIDマウスの血清における中和抗体価について調べたところ,高い抗体価とともにH5N1インフルエンザウイルスに対しても中和活性を示す,亜型交差性をもった抗体が産生されることが明らかになった。以上の結果から,SLOTsはこれまでの抗体産生技術を亢進させる画期的な技術となり得る可能性を秘めていることが強く示唆された。
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