Heat shock protein(HSP)は、細胞内における分子シャペロンとしての機能が良く知られているが、細胞外でも機能することが最近見出されている。本研究では、細胞外HSPによる血管機能調節作用を明らかにするため、血管内皮細胞HSP受容体の同定と機能解析を行った。内皮細胞cDNA発現ライブラリーからHSP結合因子をスクリーニングし、一回膜貫通型タンパク質をHSP受容体として新たに見出した。RNAiによりヒト血管内皮培養細胞のHSP受容体をノックダウンすると、マトリゲル上での管腔形成反応が抑制された。また、HSP受容体をCHO細胞へ発現させると、マトリゲル上で内皮細胞様のメッシュ構造を形成した。この反応はRac inhibitorを添加することで抑制され、またmRFP融合アクチンを共発現させると細胞辺縁部の膜ラッフリングが活性化している領域にHSP受容体とアクチンとの共局在がみられたことから、細胞外HSPによるHSP受容体を介した細胞形態変化は、HSPが作用する膜の直下におけるアクチンへの作用により引き起こされていることが示唆された。さらにHSP受容体トランスジェニックマウスを作製してマトリゲルプラグアッセイを行ったところ、野生型に比べて血管新生が亢進することを明らかにした。一方HSP受容体ノックアウトマウスでは、マトリゲル内新生血管が野生型に比べて減少し、生体内においてもHSP受容体が血管新生促進を引き起こすことがわかった。これらの研究成果から、HSP受容体が腫瘍血管などの血管新生病のターゲットとなる可能性が期待できる。
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