研究概要 |
ダウン症候群に合併する新生児-過性異常骨髄造血や骨髄異形成症候群、急性巨核球性白血病などの造血障害は、ダウン症候群患者の予後に大きな影響を与えるが、その発症メカニズムについては、先天性染色体異常、胎生期に発生するGATA1遺伝子変異の関与が示唆されているものの,いまだ十分に明らかになっていない。我々は,その解明を目的として,ダウン症候群患者の繊維芽細胞から樹立されたiPS細胞を、我々が確立したマウスAGM-3細胞株との共培養法により造血/血液細胞に分化誘導することによって、胎生期のダウン症候群患者の造血を実験的に構築することを試みた。そこで、OCT3/4、SOX2、KLF4の3遺伝子、あるいはそれらにc-MYCを加えた4遺伝子を導入することにより樹立されたダウン症候群患者由来iPs細胞を,AGM-3細胞株と12日共培養した後、フローサイトメトリーによるヒトCD45+細胞の比率、及び血液コロニー形成法、巨核球特異的分化誘導法による造血細胞活性を検討した。その結果,フローサイトメトリーによる解析では、ダウン症候群患者由来iPS細胞から血液細胞への分化誘導系では、CD45+細胞の比率が増加していた。また、血液コロニー形成法で形成される血液コロニー数は増加しており,特に赤血球系コロニーが優位に増加していた。さらに、巨核球特異的に分化誘導すると、ダウン症候群患者由来ips細胞では、巨核球系細胞への分化能が亢進していた。以上の結果は、ダウン症候群患者由来ips細胞では、造血/血液細胞への分化能、特に赤血球系及び巨核球系細胞への分化能が優位に亢進していると考えられた。
|