研究概要 |
本研究は,液晶化合物の生物学的作用とその磁場・電場配向性に着目し,新規金属錯体液晶を創製し,磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging, MRI)診断における新規造影剤の開発を目的とした.2年間の研究の結果,以下の点を明らかにした. 1. 2種類の両親媒性液晶化合物は,ヒト単球系白血病細胞U937のS期停止を介した増殖抑制を示した.この時細胞内タンパクのうちMCM2, cyclin A, cyclin B, CDK2, phospho-CDK1 and Cdc25C発現の低下が観察された. 2. Phenylpyrimidine及びcyanobiphenyl誘導体は,非小細胞肺癌A549細胞をA549細胞のG1期停止させて細胞増殖抑制作用を示した.このうちphenylpyrimidine誘導体の1つは,正常繊維芽細胞への毒性は示さなかった. 3. 16種類の液晶関連化合物の薬理作用を慢性骨髄性白血病細胞K562で検討した結果,2つの化合物にμMレベルでの強い細胞増殖抑制作用が認められた.このうちの1つは,p38及びc-Junを活性化し,K562をアポトーシスへと誘導する. 4. 4-cyano-40-(6-hydroxyhexyloxy)biphenyl(I-CN)と4-methyloxy-40-(6-hydroxyhexyloxy) biphenyl(I-OMe)の等量混合物は非小細胞肺癌A549細胞の増殖を強く抑制した.さらにこの混合物はそれぞれの単独に比べて高い液晶性を示した. 5. 現在将来の臨床応用を目指して,引き続き磁場及び電場配向特性を有する新たな金属錯体液晶化合物の開発に取り組んでいる.
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