研究課題
挑戦的萌芽研究
これまで弱毒化麻疹ウイルスのリバースジェネティクス法により、一本鎖抗体(scFv)をウイルス表面蛋白上に提示し、かつ元来のウイルス親和性を排除することによって、scFvが持っている特異性と親和性を介して特定の標的腫瘍細胞にのみ感染させる技術を世界で初めて開発した。そこで本研究では、このテクノロジーを応用し、ウイルスにscFvを提示させた革新的ディスプレイライブラリー、"ウイルス(Virus)+抗体ライブラリー(Antibody Library)=ビロボディライブラリー(Virobody Library)"を確立し、その技術を用いて新規抗体医薬の開発を目指した。scFvを提示した麻疹抗体ディスプレイライブラリーを、ヒトA549肺癌、又はPancI膵臓癌細胞にMOI=0. 01~1で感染させ、1時間のインキュベーション後、OPTI-MEM(Invitrogen社)で4回感染細胞を洗浄した。培養2~5日後、ウイルス感染細胞を集め、凍結融解することによってウイルスを回収するバイオパニング工程を繰り返した。最終的にクローン化したウイルスのゲノムRNAを回収し、RT-PCR法によりscFv遺伝子を増幅し、シークエンス解析を行うことによって腫瘍特異的抗体の同定を試みた。しかしながら、同定されてきたscFvは癌細胞に対する抗体として機能するものではなかった。この原因としては、麻疹抗体ディスプレイライブラリーの多様性が不十分であると予想された。そこで従来のライゲーションではなく、λファージの部位特異的組換え反応を利用したプラスミドライブラリーの構築法によって、非常に効率よく安定してプラスミドライブラリーを獲得することが可能となった。一方、従来の麻疹蛋白発現ヘルパー細胞を用いたウイルス回収は非常に低い効率であったが、非増殖型T7ポリメラーゼ発現ワクシニアウイルスによる発現系を用いたレスキュー法によって、その効率は大幅に向上した。
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