研究課題
若手研究(A)
本研究の目的は、情動や心理ストレスが自律神経系を含めた生体の恒常性維持システムに作用する脳内メカニズムを個体レベルで解明することである。そのために、情動を司る大脳辺縁系から恒常性維持機能を司る視床下部や脳幹への情動シグナル伝達に関わる未知の神経投射に焦点を当て、覚醒ラットのそうした投射ニューロン群の神経活動を、光遺伝学的技術とin vivo生理学を組み合わせて、特異的に操作する技術の開発を行った。そして、そのストレス性自律生理反応への影響を調べる実験を継続して行っている。本研究の成果は、自律神経失調症などの様々なストレス疾患の病態解明に貢献するものであり、また本研究で開発する、神経接続特異的に活動を操作する技術は、多様な脳機能を司る神経回路及びその動作原理の解明に幅広く応用しうるものである。1)ChR2あるいはeNpHRの遺伝子を組み込んだウイルスベクターの作製光によって活性化するカチオンチャネル(チャネルロドプシン2:ChR2)およびクロライドポンプ(ハロロドプシン:eNpHR)の遺伝子を組み込んだウイルスベクターの作製に成功した。2)逆行性感染した大脳辺縁系ニューロン群の組織学的同定作製したウイルスを、ラットの脳の中でも、ストレス信号の処理に関わる大脳辺縁系に注入し、ニューロンに感染することを確認した。ウイルス感染によって発現したChR2あるいはeNpHRには蛍光蛋白質をつなげているので、その発現を蛍光顕微鏡下で組織学的に観察することができた。発現したChR2あるいはeNpHRは、自律生理機能制御に関与することが分かっている視床下部などの部位に投射した軸索の終末まで輸送されることも分かった。このように、自律生理機能制御に関与する脳部位に投射する大脳辺縁系ニューロン群にウイルスを用いて遺伝子導入を行い、ChR2やeNpHRが発現することの確認を行った。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Frontiers in Bioscience
巻: 16 ページ: 74-104
分子精神医学
巻: 11 ページ: 23-29
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 107 ページ: 8848-8853
生体の科学
巻: 61 ページ: 276-285
40017166564
自律神経
巻: 47 ページ: 281-286
10026905874
http://www.cp.kyoto-u.ac.jp/Nakamura/nakamura-j.html