研究概要 |
自然界に存在する実システムは多数の要素の相互作用によって成り立ち,特に予期せぬ振舞いによって我々を翻弄する.この振舞いを予測するには過去の観測値を利用できるが,しかし観測した要素の全てが予測対象のシステムを構成している保証はない.そこで我々は,過去の観測値に対する予測精度を最大化するように,予測にとって本質的な要素を特定し,予測モデルを最適化する.またターケンスの埋め込み定理によれば,1変量データを多次元アトラクタに変換することでシステム全体の振舞いを再現できる.これにより因果関係にある要素を特定する必要はない.しかし埋込みにはパラメータが存在し,これらを最適化する必要がある.つまり,いずれにせよ最適化問題を解く必要があり,本研究ではメタ解法の一つである遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた.さらに,実システムは動的に構造変化する可能性があるため,予測モデルの最適化を動的に繰返した.この動的最適化の有用性を検証すべく,実際の為替取引市場に対して適用したところ,予測精度の向上を実現できた.これはシステムが実際に構造変化していることを裏付けている.
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