研究概要 |
高齢者を対象としたこれまでの研究から,加齢が記憶機能に及ぼす影響について多くのことが明らかとなっている。また,高齢者が活動的で自立的な生活を送る上で,記憶機能の維持・向上に対する関心も高まっている。しかしながら,日常生活上の記憶に関する問題には,記憶機能の低下だけでなく,自身の記憶機能や,求められた記憶課題の難易度を適切に評価すること(メタ記憶)も重要であることが指摘されている。本研究では,以下の2点を目的とし2つの実験を実施した。1つは,高齢者のメタ記憶の特徴を解明し,メタ記憶の正確性に影響する要因を明らかにすることである。2つめは,記憶に対する自信や不安といった「記憶に対する信念」が,日常生活の記憶の問題の改善に有効な携帯電話のリマインダ機能の学習に与える影響を明らかにすることである。実験1から,高齢者は記憶パフォーマンスを適切にモニタリングすることが困難であるが,特に,抑うつ得点が高いほど記憶パフォーマンスの予測は不正確であった。実験2から,リマインダ機能の使用には記憶に対する信念が影響していないことが示された。本研究では,これらの結果をふまえ,日常生活上の記憶に関する問題を改善するためのメタ記憶に対するアプローチについて考察した。
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