研究課題
若手研究(B)
変異SOD1を発現するアストロサイトが運動ニューロン変性を誘導することがトランスジェニックマウスやES細胞を用いた研究で明らかにされている。しかしながら、SOD1変異を有する患者由来のアストロサイトについては運動ニューロン変性を誘導するかどうかは不明である。そこで、当研究室で既存の方法を改変し、これまでの80日に比較して短期間でアストロサイトへ分化誘導する新たな方法を確立した。その後、SOD1変異を有する患者由来のiPS細胞からアストロサイトへの分化誘導を行った。アストロサイト特異的にtdTOMATOを発現するレンチウイルスを作製し、分化誘導で得られた細胞に感染した。その結果、約50日でtdTOMATO陽性でかつI型アストロサイトに類似した細胞を確認することができた。変異SOD1を過剰発現するマウスおよびコントロールマウスから初代培養アストロサイトを単離し、マイクロアレイで遺伝子発現解析を行った。その結果、変異SOD1マウス由来アストロサイトで生理活性脂質の合成に関与する特定のプロスタグランジン合成酵素、シクロオキシゲナーゼの発現量が上昇していた。さらに定量的PCR法により、変異SOD1マウス由来アストロサイトで上記プロスタグランジン合成酵素の発現が有意に上昇していることを確認した。これらの結果から、上記プロスタグランジン合成酵素、シクロオキシゲナーゼによって産生される特定のプロスタグランジンの増加が予想された。そこで、アストロサイト培養上清中に含まれる各種プロスタノイドの定量を行ったが、測定系の問題で、上昇を予想したプロスタグランジンの定量には至らなかった。しかしながら、有意差はないものの、定量可能であったプロスタグランジンは変異SOD1マウス由来アストロサイトで高い傾向にあった。このことから、SOD1変異を有する患者由来のアストロサイトでも上記のプロスタグランジン合成酵素、シクロオキシゲナーゼ経路が活性化している可能性が示唆された。
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脳21
巻: 14(3) ページ: 20-24
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