研究概要 |
近年我々は,低酸素環境で行うレジスタンス運動が蛋白同化作用を持つ成長ホルモンの分泌を常酸素環境よりも増大させることを明らかにした(Kon et al.Med Sci Sports Exerc.2010).本研究では,間欠的低酸素レジスタンストレーニングが筋の適応に及ぼす影響について検討した. 健常成人男性16名を対象とし,低酸素(酸素濃度14.4%)レジスタンストレーニング群(HRT群,n=9)または常酸素レジスタンストレーニング群(NRT群,n=7)に分類した.トレーニングには,ベンチプレスおよびレッグプレス(負荷強度:70%IRM,セット数:5セット,セット間・種目間休息:90秒)を用い,8週間(計16回)のトレーニングを実施した.トレーニング前後に大腿部50%部位における筋横断面積,ベンチプレスおよびレッグプレスの最大発揮筋力,レッグプレスの70%1RM負荷における運動量(負荷×回数:筋持久力の指標)を測定した.トレーニング1回目および16回目においては,レジスタンス運動前後に動脈血酸素飽和度(SpO_2)および成長ホルモン濃度を測定した。 両群の筋横断面積,最大発揮筋力,運動量はトレーニングにより増加した(p<0.01).トレーニング後の筋横断面積および最大発揮筋力に群間差は認められなかったが,運動量はHRT群の方がNRT群よりも高値を示した(p<0.05).低酸素暴露後のHRT群のS_pO_2はNRT群よりも有意に低値を示した(p<0.01).成長ホルモンは両群ともにレジスタンス運動後に増加した(p<0.05)が,群間差は認められなかった. 本研究の結果から,間欠的低酸素レジスタンストレーニングは常酸素レジスタンストレーニングと比較し,筋肥大および筋力増加の程度に影響を及ぼさない可能性があること,筋持久力の向上により効果的である可能性があることが示唆された.
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