図版などを収集したことにより古代写経の識語の本文を確定させた。この確定本文を基礎にして日本史学・日本文学・日本語学・仏教学の協同作業によって注釈作業を進め、識語にこめられていた祈願内容を抽出することができた。また識語のなかで特に重要と思われるものは注釈内容を学術雑誌において公表した。これにより信頼できる識語本文の集成が完成し、写経識語を新たな歴史資料として活用する基礎的条件を整えることができた。写経の識語が古代の社会・信仰を考えるうえで有益な情報を含んだ文字史料である。今後はさらに敦煌写経など同時代の中国における事例との比較なども視野に入れ、研究の展開が期待できる。
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