研究概要 |
企業はさまざまな関係性を周囲と形成しうるが,それら関係性は種類が多様なだけでなく,その組み合わせが企業に影響を与えているはずである.そこで本研究では,企業の複合的ネットワークの構造分析の検証を行った. 本研究では企業における異なる関係性データを利用して複合的ネットワークを作成した.ここで関係性データとは,特許の共願関係,論文の共著関係,取引関係である.ネットワークの構造分析手法は近年急速に発達しているが,ここではpモデルを利用する. pモデルは確率モデルであり,ある構造が確率的に有意に現れるかを判別できる.この手法により,日本の重点4分野において構成されているネットワークはそれぞれに特徴を持つことがわかった.たとえば特許と論文の共願・共著関係においては,どちらかを専門的に行うプレーヤーが見つかった. 取引と特許共願関係についてみると,企業間の取引・特許共願関係の構築可能性は,他の重要と思われるそれぞれの企業の業種や規模よりも,取引・特許共願関係がすでに構築されている,あるいはいないことがその反対の関係があるかないかにより強く影響を与えることがわかった.これらの知見はリンクの有無や数だけを問題にしてきた,従来の重回帰分析では求められえない知見である.
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