本研究は、公民館経営に関する学術的・実践的知見を整理するとともに、複数の自治体を対象として、公民館活動や当該自治体における公民館の配置状況等に関する質量を伴ったデータを収集・分析することを通し、公民館が有する社会的役割に関して裏づけのある議論を展開することを目的としている。 研究期間の最終年となる平成24年度は、調査票調査の対象となった秋田県北地域の公民館・公民館類似施設において、分館網が充実している館を対象にヒアリングを行った。その結果、公民館の活動の活性度は、館の対象区域の広狭(施設へのアクセス・アビリティ)よりも、学習活動を主導する地縁団体等の有無が重要な1つの鍵となっている場合があることを確認することができた。また、過年度において実施した調査票調査の対象地域にある教育委員会へもヒアリングを行い、中心地から離れた集落への学習支援、域内に存在する県立施設と公民館との役割分担や連携の実状・あり方について情報を得ることで、公民館整備体系を考察するうえで勘案すべき要因を補うことができた。 政府統計や調査票調査での量的データとヒアリングで得られた知見を総括すると、公民館は役場機能や避難所機能などの役割を担う点においては狭域に配置されるべき施設であり、学習支援をも含めた意味での経営にあっては、地域住民のボランタリズムに大きく依拠し、かつ期待される施設であると考えられた。そのような観点から報告書をとりまとめる。
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