これまでの研究においてシュバルツシルト時空における摂動、及び束縛軌道を運動する質点に働く重力的反作用力を計算する数値コードを開発し、反作用力を定量的に評価する事が可能となった。本年度は、数値計算コードにより得られたデータを基に、重力的反作用力が質点の運動に及ぼす影響について研究を進めた。 特に、楕円軌道において質点が中心ブラックホールに最も接近する地点(近点)の移動に注目した。近点移動は座標の取り方に依存しない物理量であり、ポストニュートン法や数値相対論等の他の計算手法との比較を考える際に重要である。また、近点移動は放出される重力波の位相情報に深く関わっており、反作用力の重力波波形への影響を調べる上でも有用である。重力的反作用力が近点移動に及ぼす影響を評価するために、反作用力を含む運動方程式を用いて近点移動補正の定式化を行った。その定式を用いて、数値計算により得られた反作用力データから近点移動補正を定量的に求めた。さらに、ここで得られた結果とポストニュートン法や数値相対論で予言される値との比較を行い、計算精度内で良く一致することを確かめた。軌道の反作用力補正を数値相対論、ポストニュートン法、ブラックホール摂動法で同時に比較した例は他になく、これは世界で初めての成果である。この様な複数の手法の比較は、連星の運動や重力波波形の解析的モデルを効率良く構築するための重要な情報となると期待される。
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