研究概要 |
これまでの研究で、tetraphenylethene誘導体の電気化学測定において、1段階2電子移動する有機化合物について、1, 2-bis(4-methoxyphenyl) 1, 2-bis(4-dimethylaminophenyl)-ethene(MAE)が最適な分子構造であることが分かった。(1) MAEをπ共役を介して結合した高分子(2) MAEをアルキル鎖を介して結合した高分子について検討した。(1)について、昨年度の検討より、1段階2電子移動サイト間の相互作用が強いため、最初の2電子移動だけ1段階で進行し、3電子目移行の移動は、段階的に生起することが判明した。(2)について、MAE2量体、3量体からなるオリゴマーのアセトニトリル溶液中の電気化学測定を行った。拡散律速の電流であることを確認し、電流値の立ち上がりからNernstの式を用いて電子移動数nを計算すると、それぞれ、2. 1, 2. 2となり、MAEユニット間の相互作用が無く、それぞれ独立して1段階2電子移動することが分かった。1段階2電子移動分子を高分子化するためには、ユニット間の相互作用を考慮して、アルキル鎖を介した結合が最適であり、1段階で複数の2電子移動を生起する分子が実現出来ることが分かった。
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