研究課題
若手研究(B)
高品質歪みGe(111)チャネルの実現へ向け、まずガスソースMBEによるSi(111)基板上のSiGeバッファー層、およびGe層の成長について、成長温度、ソースガス流量比などの成長パラメータを調べた。その結果、Si(100)基板上と比較して、成長レートが遅くなる傾向にあることが分かり、成長温度を高くする必要があることが分かった。その上で形成したSiGe層の評価を進め、Si(100)上と比べ、積層欠陥などの面欠陥を伴う歪み緩和が生じることを明らかにした。表面モフォロジーは、通常Si(100)上の成長で生じるクロスハッチパターンが現れず、(111)すべり面に対応した三角形状のラフネスとなることが分かった。最適な成長条件において、表面ラフネスを数nmに抑制させることができた。続いて、一軸歪みGe(111)チャネル形成に向けて、イオン注入法を初めて(111)基板に適用した。すなわち、Si(111)基板へイオン注入を施し、それによる欠陥導入によって上に成長させるSiGe層の歪み緩和の大幅な促進を目指した。イオン注入ドーズ量を系統的に変化させ、歪み緩和率のドーズ量依存性を得、その結果、5×10^<14>cm^<-2>程度のドーズ量を塊に急激に歪み緩和率が上昇し、イオン注入により導入された欠陥が歪み緩和に寄与することが示された。これは、これまでに(100)基板上に確立してきたイオン注入法が、(111)基板においても非常に有効であることを示している。これを応用し、一軸歪みを得るための選択的イオン注入についての検討も行った。イオン注入をストライプパターン状に施すことで、SiGe(111)の局所的な歪み制御を試み、ラマンマッピング測定により、狙い通りの制御が成功していることが示された。これは一軸歪みが達成されていることを強く示唆しており、今後詳細な歪み状態評価を進める。
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