研究概要 |
・原子間力顕微鏡,(AFM)で原子分解能を得るには、カンチレバーを共振周波数で振動させる周波数変調法が使われる。本研究では、カンチレバーを小さい振幅で振動させるほど、空間分解能と相互作用力測定のS/N比が向上することを理論計算で明らかにした。AFMを小振幅で動作させるためには、バネ定数が大きいカンチレバーを使う必要があるが、水晶カンチレバーをピエゾ電気で検出する従来の方式では、感度があまり上がらないことが知られている。そこで、水晶カンチレバーと光干渉方式変位検出型を組み合わせたAFMを開発し、実際に小振幅動作が可能であることを確かめた。これにより、原子分解能の像の取得に加えて、フォーススペクトロスコピーが高感度に行えることを実証した。 ・Pb/si(111)-(7x7)表面上のSi原子と置換原子であるPb原子の上でトンネル電流と相互作用力の同時測定を行った。実験には、金属コートされたSiカンチレバーを使用し、室温での熱ドリフトを補償して精密な実験を行った。その結果、Si,Pb両方の原子共に、トンネル電流と相互作用力が探針-試料間距離に対して指数関数的に増大することが明らかになった。また、トンネル電流と相互作用力の距離依存性の関係であるが、距離範囲によって依存性が変化し、過去の理論で予想されるよりも複雑なものとなった。一方、理論計算では、トンネル電流と相互作用力はほぼ、同じ減衰距離を持つ指数関数で書けることが分かった。
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