研究概要 |
マイクロマシンやヘッドディスクインタフェースなど,ナノメートルの加工・運動・制御を対象とするナノテクノロジーの分野では,単分子層厚さの液体潤滑膜(分子潤滑膜)による精確かつ安定な高速相対運動を実現することが重要な課題である,そこで,固体接触が発生せず分子潤滑膜のみを介した固体二面間の相対運動を実現させながら,高速摺動に対する分子潤滑膜のトライボロジー現象(凝着・摩擦,減耗・修復)を解明し,高速領域において所望の潤滑特性を付与した機能性潤滑表面の設計論を確立することを目的とした.本年度は,主として以下の項目を実施した. (1)高速摺動時の振動抑制 開発してきた高速トライボテスタでは,高速摺動時に摺動子の不安定振動が励起される問題があった.そこで,レーザドップラ振動計を用いて不安定振動を測定することにより,振動発生のメカニズムを同定し,さらに摺動子支持機構を新たに設計・試作した.摺動子支持機構の改良により,不安定振動の抑制が可能であることを確認した. (2)摺動子の最適化 摺動子の表面粗さの先端が分子潤滑膜を貫通して固体接触が発生する状態を防ぐためには,摺動子の表面粗さの低減が必須である.そこで市販のガラス球から摺動子に適したものを選定するとともに,ガスクラスタイオンビームによる平滑化加工を試みた.種々の加工条件において,表面粗さおよび表面エネルギーの測定により加工効果を定量化し,摺動子の最適化に必要なデータを蓄積した. (3)分子シミュレーション分子 シミュレーションによるナノ厚さ液体潤滑膜のトライボロジー特性の定量評価を可能とするために,ランダム共重合体に適用できる全原子シミュレーションに基づいた粗視化方法,および固体表面におけるナノ厚さ液体潤滑膜の拡散実験に基づいて,ランジュバン方程式の摩擦係数を決定する方法を提案した.
|