研究概要 |
排卵期において,卵胞内の大部分を占める顆粒層細胞由来の分泌因子が卵丘細胞を刺激する結果,卵丘細胞における様々な遺伝子が発現し,卵子成熟が誘導される.現在の体外培養系は,卵丘細胞卵子複合体(COCs)のみを複数個培養することから,顆粒膜細胞由来の卵丘細胞を標的とする卵子成熟促進因子を考慮していないものであったが,プロテアーゼであるTACE/ADAM17の働きにより顆粒膜細胞と卵丘細胞から分泌されるEGF-like factorが卵丘細胞のEGFR-ERK1/2系を活性化すること,顆粒膜細胞および卵丘細胞から分泌されるPGE2系によりTACE/ADAM17-EGF-like factor系が維持され,その結果持続的に卵丘細胞のERK1/2系が活性化され,卵成熟が促進することを明らかにした.さらに, FSH-PKCにより活性化されるc-SrcがTACE/ADAM17と結合することによりEGF-like factorが効率的に顆粒膜細胞と卵丘細胞から分泌されることを明らかにした.さらに, EGF-like factorとTACE/ADAM17発現, c-Src活性を誘導するFSHを至適濃度添加する培養系により卵成熟率の向上に成功した.
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