研究概要 |
セコプレジザン型セスキテルペンはシキミ科植物に含まれる特有の成分で、その特異な構造は世界中の合成化学者の興味を集めている.2002年と2009年に単離,構造決定されたジアジフェニンおよびジアジフェノリドは特異な多環性構造からなることに加え、胎児大脳皮質由来初代培養神経に対して神経突起伸展促進作用などの神経栄養因子様活性を有する.これら活性化合物は,脂溶性低分子であることから体内では容易に脳へ移行すると考えられ,神経変性疾患の新たな治療薬になると期待されている,本研究ではジアジフェニンとジアジフェノリドに共通して応用できる系統的合成法の開発に着手した. 本年度は両化合物の共通構造であるシクロペンテン環、シクロヘキサン環、およびラクトン環の構築法を検討した,環化反応には分子内Heck反応と分子内Tsuji-Trost反応を適用した.本合成における分子内Mizoroki-Heck反応はプロトン性溶媒を用いると劇的に反応性が向上することを見いだし、定量的にシクロペンテン環の構築に成功した.一方Tsuji-Trost反応を応用したシクロヘキサン環とラクトン環の連続環化反応は、溶媒、配位子、触媒条件を詳細に検討した結果、配位子として二座配位子を用いることで立体選択的に収率良く反応が進行することを見いだした.
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