研究課題
若手研究(B)
循環器疾病の心房細動(AF)と呼吸器疾病の睡眠時無呼吸(SAS)には、その背後に自律神経系のバランスの崩れという共通点やAFの発生頻度がSASの重症度に依存するという報告から、何らかの病因学的な存在が推測されてきた。しかし、これまでに両者の因果関係は明確に示されていない。本研究は循環動態を一定に保ち、中枢側(延髄の呼吸ニューロンの活動)と効果器側(心臓、血管、呼吸活動)の同時記録が可能なin situ標本を用いて、副交感神経系を刺激したときの延髄の呼吸ニューロンの活動変化と、その結果生じる呼吸リズムや心拍動リズムの変化を比較・検討し、心房細動の発生と呼吸活動の変化との関連を電気生理学的に検証することを目的としていた。本研究期間は前年度から継続して延髄の呼吸ニューロンの活動そのものが変化した場合の効果器、すなわち心拍リズムや呼吸リズムがどのような影響を受けるか、また心房細動発生の有無の検討を行った。呼吸ニューロンの活動変化を惹き起こす方法として心拍出量の変化、具体的には対外循環によって全身灌流させている灌流液の流量を変化させ、呼吸ニューロンの活動変化、そして同時に灌流圧、心拍数、呼吸数の変化を記録した。灌流量の増加に伴い灌流圧、心拍数、呼吸数は増加し、時には呼吸性不整脈も観察された。一方、灌流量を減少させると、灌流量の減少直後は心拍数には殆ど影響はみられなかったが、呼吸数と灌流圧は減少、そしてその後は呼吸や心拍が突然停止してしまうという現象が観察された。呼吸ニューロンの活動については、灌流量の増加では呼吸ニューロンの活動は、その活動間隔が短くなる傾向がみられた。また灌流量を減少させた場合は、その活動間隔が長くなるだけではなく、発火パターンの規則性にも変化がみられる傾向があった。灌流量を減少させた場合の呼吸ニューロンの発火パターンについて、呼吸や心拍が停止する際を含めて検討を続けたいと考えている。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Gen.Physiol.Biophysics
巻: 30(1) ページ: 28-33