研究概要 |
本研究は、加齢に伴う骨格筋量・筋力減少(サルコペニア)の危険性の調査およびスクリーニングとしての最適なバイオマーカーの確立を目的とした。 1,サルコペニアの代謝性疾患に対する危険性に関する研究 骨格筋は糖を貯蔵する働きがあることから,高齢者におけるメタボリックシンドローム(MS)では,サルコペニアが内臓脂肪とは独立して影響を及ぼしていることが推測された。そこで,2005年-2006年に関連施設において、腹部CTによる内臓脂肪計測および全身DXAによる四肢骨格筋量(SMI)計測を受けていた高齢女性90例を対象とし,保存血清を用いて追加検査を行い,ウエスト周囲径を除いたMSのリスク数に関する検討を行った。結果は,高齢女性におけるサルコペニアが,内臓脂肪とリスク数との関連をさらに増強させること,さらに内臓脂肪とは独立してリスク数と関連することが明らかとなった。 2,サルコペニアのバイオマーカーに関する研究 当院および関連施設の外来患者および入院患者に問診,身体計測(筋力測定含む),高齢者総合機能評価,血液尿検査,全身DXAを行い,検討を行った。四肢骨格筋量指標と下腿周囲径、ならびに握力の間に、有意な正の相関が認められた。四肢骨格筋量指標とBMIの間には有意な相関は認められなかった。血清レプチン濃度と体幹脂肪量指標との間に、有意な正の相関が認められた。血清レプチン濃度と四肢骨格筋量指標の間に、有意な負の相関が認められた。血清レプチン濃度に対する重回帰分析によれば、体幹脂肪量指標が独立した正の、四肢骨格筋量指標が独立した負の説明変数であった。高齢女性において、レプチンはsarcopenic obesityのバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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