研究概要 |
最近、軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)が、認知症の前駆段階として認知症の発症予防の観点から注目されている。最近になり、軽度パーキンソン徴候(mild parkinsonian signs:MPS)が認知症やパーキンソン病などの前駆段階である可能性が指摘されてきているが、その実態や臨床的意義はいまだ不明な点が多い。 島根県海士町における60歳以上の住民1,129名を対象として,自覚的うつを評価するための老年うつスコア(Gediatric depression score : GDS), Mini Mental State Examination (MMSE)を用いた認知機能評価を行なった。Louisらの提唱している診断基準を用い、Unified Parkinson's disease rating scale (UPDRS)運動スコアの1点が2つ以上ある場合、2点が1つ以上ある場合、振戦が1点以上ある場合をMPSと診断した。同意が得られた住民に対しては、アクチグラフィーを用いて活動量の評価を行った。 MPS群は,運動障害を認めない群に比べて有意にMMSEが低下していた。MCI群では認知機能正常群に比して、MPSを呈する症例が有意に多かった。一方、認知機能が低下しているほど,また運動機能が低下しているほどGDS得点が高い傾向があった.さらに、アクチグラフィーにより計測した活動量とGDSやMMSEとの有意な相関もみられた。 運動機能としての活動量やMPSの重症度と、うつの重症度,認知機能低下の程度に関連が認められ、運動機能低下、うつ、認知機能低下は、相互にそれらの発症に影響している可能性が推定された。今後,MPSの臨床的意義を明らかにするためにMPS例についての縦断研究が必要である。
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