研究概要 |
血管内感染症が疑われるが、抗菌薬投与後あるいは培養が困難な菌のために血液培養が陰性となる症例が存在する。血液培養陰性の感染症に対する血液PCRを用いた遺伝子診断の有用性について検討した。preliminaryなデータを含め、感染性心内膜炎21例(初回培養陰性6例、培養陽性15例)、培養陰性の感染性動脈瘤・人工血管感染4例を対象とした。培養陰性の感染性心内膜炎6例中5例において血液PCRにて細菌遺伝子を検出した(S.mitis, S.canis, Cardiobacterium sp., Porphyromonas sp.)。血液PCR陰性の1例も術中検体にて細菌遺伝子を検出した(S.salivarius)。この1例を含め手術が施行された5例中4例にて術中組織のPCRが陽性となり血液PCRと同一遺伝子を検出した。培養陰性の感染性動脈瘤・人工血管感染例はいずれも血液PCRが陽性となり、術中検体からも同一遺伝子を検出した(Enterobacter sp., E. cloacae. S. aureus, L. anisa)。血液培養にて起炎菌が確定している感染性心内膜炎15症例(自己弁12例、人工弁3例)を対象に抗菌薬開始3日目以降、血液培養が陰性化した時点で血液PCRを施行し、全例で細菌遺伝子を検出した(S.aureus 6例、CNS 1例、Streptococcus sp.7例、Enterococcus faecalis 1例)。人工弁感染に対する非手術例で血液PCR陽性(血液培養は陰性)が数ヶ月続く症例を認めた。持続的菌血症を特徴とする血管内感染症においては、培養が陰性化した後もしばらくの間、血液PCRにて細菌遺伝子を検出できることができた。細菌の遺伝子診断は薬剤感受性は分からないものの、起炎菌を推定することで、診断・治療に利用できると考えられた。
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