研究概要 |
C57BL6マウス(喫煙群)を用いて3R4Fたばこ4本/日、5日/週の喫煙暴露を2週間行い、非喫煙暴露群とともに気管支肺胞洗浄液(BALF)の各種白血球数のカウントを行ったところ、喫煙群で主に好中球とマクロファージの優位な上昇を認め、さらに肺でのIl1β, Il6, Tnfα, Mip1α, Mcp1のmRNAの発現およびELISA法におけるIL6, TNFαの分泌の優位な上昇も認められた。肺のパラフィン切片を用いたBrdU染色では喫煙群で細胞増殖が優位に亢進していることが確認された。この条件下での喫煙暴露がマウス肺における炎症・細胞増殖を惹起することが確認された。 つづいて、NF-κBの活性化に必須なIKKβの発現が骨髄系細胞(マクロファージや好中球)でのみ欠損している遺伝子改変マウス(IKKβ^<Δ_<mye>>マウス)を用いて同様の実験を行ったところ、喫煙暴露によるBALF中の総細胞数、好中球数、マクロファージの増加や肺におけるIl6, Tnfα, Mip1α, Mcp1のmRNAの発現上昇およびELISA法におけるIL6, TNFαの分泌上昇は対照群に比べて優位な低下・抑制が認められた。喫煙暴露による細胞増殖の増加も対照群に比し優位に低下していた。喫煙暴露による肺の炎症および細胞増殖に、骨髄由来細胞のIKKβ-NF-κBの経路が重要な役割を果たしていることが示唆された。 K-ras^<LA2->, IKKβ^<Δ_<mye>>マウス、対照群のK-ras^<LA2->, IKKβ^<flox/flox>マウスを用い、我々のすでに見いだした喫煙暴露による肺腫瘍発生促進モデルに従い喫煙暴露を行ったところ、対照群で認められた肺腫瘍数、最大肺腫瘍径の増加はK-ras^<LA2->, IKKβ^<Δ_<mye>>マウス群で認められなかった。以上のことから、喫煙による肺の骨髄細胞におけるIKKβ-NF-κBを介した慢性炎症が肺腫瘍の発生を促進することが示唆された。
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