研究概要 |
我々はクリオグロブリン関連膜性増殖性糸球体腎炎や抗GBM抗体腎炎におけるイマチニブ(selective tyrosine-kinase inhibitor)の治療効果を報告してきた。今回、イマチニブと比較してBcr-Ablに約30倍、c-Kit、PDGFRに同等の阻害活性を持つニロチニブの慢性腎不全進行抑制効果に関して検討した。59匹の5/6腎摘ラットを治療群と未治療群に無作為に振り分けた。対照群として12匹のsham ope群を作成した。ニロチニブは45mg/kg、コントロール群は同量の蒸留水を術後2週後から連日8週間経口投与した。また腎線維芽細胞、メサンギウム細胞を用いてニロチニブによる線維化抑制のメカニズムを検討した。ニロチニブ投与群において有意に1)治療開始1週後からの蛋白尿の低下2)腎重量の低下3)血清Cr値の低下4)糸球体硬化、尿細管障害の軽減5)腎皮質における線維化マーカーmRNA発現低下(collagen I, TGF-β, fibronectin, PAI-1) 6)間質におけるED1+細胞(マクロファージ)の減少7)生存率の改善を認めた。腎線維芽細胞、メサンギウム細胞を用いた培養実験では、ニロチニブ前処置により、PDGF-BBによるPDGFRβリン酸化抑制がみられた。ニロチニブは血圧非依存性に腎不全進行を抑制した。各種腎炎モデルで強力な腎炎抑制効果を示し、主に癌領域で広く臨床で使用されているイマチニブやニロチニブは、新規の腎炎.腎不全治療薬と成り得る強い可能性を秘めている。
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