研究課題
若手研究(B)
この研究は、遺伝的なホスファチジルコリン合成酵素異常による「ミトコンドリアの巨大化を伴う筋ジストロフィー」の病態機序解明と治療法開発を目指したものである。1.CHKBの相同遺伝子であるchkbにnull変異を持つマウスは、ヒト筋ジストロフィー同様ミトコンドリアの巨大化を示す。このマウスの骨格筋ではホスファチジルコリン含量が低下しているが、その脂肪酸分子種プロファイルをマススペクトロメとリー解析により調べたところ、骨格筋および骨格筋より単離したミトコンドリアにおいてドコサヘキサエン酸を含むホスファチジルコリンが著減していることがわかった。これは、ドコサヘキサエン酸を含むホスファチジルコリンによる治療に役立つ可能性を示唆している。2.このマウスの骨格筋では、ミトコンドリアからの活性酸素産生が増加し、過酸化脂質が増加していることを見いだしている。酸化ストレスはミトコンドリア機能低下や骨格筋の変性に関わっていると考えられている。抗酸化薬であるトロロックスをモデルマウスに与え、治療効果を検討した。骨格筋において酸化ストレスの指標である過酸化脂質の減少がみられたが、ミトコンドリア形態には大きな変化は見られなかった。3.このマウスの骨格筋では、ミトコンドリアが選択的に自己貪食され、病気の進行にしたがい、経時的に消失していくことを見いだした。この疾患の特徴であるミトコンドリアの形態異常にミトコンドリア選択的オートファジーが関わっている可能性を示唆した。
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