研究概要 |
本研究では,統合失調症の動物モデルである周産期仮死モデルを用い,同モデルに発現する行動薬理学的異常が胎生期の母体を通じたクロザピン投与により予防されるか否かを検証した。同モデルは,出生直前に子宮内仮死状態を経験させると,生後6週齢に海馬歯状回における神経新生が低下し,生後12週齢にドパミン作動薬への反応性が増大するなどの統合失調症類似の行動異常が現れる。そこで,妊娠ラットにクロザピン,ハロペリドール,生理食塩水のいずれかを前投与しておき,その後に周産期仮死モデルを作成し,生後6週における神経新生を組織学的に調べるとともに,生後12週におけるメタンフェタミン投与後の行動異常を測定した。その結果,いずれの検討においても,クロザピンを投与された群は,生理食塩水あるいはハロペリドールを投与された群と有意な差を示さなかった。以上より,クロザピンが周産期仮死モデルに対し発症予防的効果があるとする仮説は支持されなかった。
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