研究概要 |
核内ホルモン受容体RORαは乳癌細胞株に発現しているこが2001に報告されて以来,乳癌内での働きは全く明らかになっていない.我々は乳癌細胞内におけるRORαの働きを解析することを目的とし,以下の実験を行った. 実験1:乳癌組織におけるRORαの発現解析は報告されていない.RORαの全発現量,および,4つのサブタイプの発現量を定量した,乳癌手術症例78例より乳癌手術時に新鮮な検体を取得し,mRNAを抽出後real-time RT-PCR法にて定量した.乳癌におけるRORαの発現は,サブタイプごとにみるとRORα4の発現量が多いという結果であった.また,RORαの発現量と臨床病理学的因子(ER,PgR,HER2,年齢,腫瘍径,核異型度,リンパ節転移の有無,脈管侵襲の程度など)と比較検討したところ,悪性度の高い乳癌ではRORαの発現量が有意に低いという結果であった. 実験2:乳癌組織を用いたRORαに対する免疫染色は報告例がない.その一つの理由として,抗体の問題があげられる.乳癌のパラフィン包埋切片を用いて免疫組織染色が可能かどうかを模索したが,やはり良質な抗体はなく,免疫染色は成功していない. 実験3:我々はこれまでRORαのサブタイプのうちRORα1を用いて転写活性や結合実験を行ってきた.RORαには全部で4つのサブタイプが存在するので他の3つに関しても転写活性を持つかどうかを解析する.RORα2,RORα3の発現ベクターは作成できていないが,RORα4の発現ベクターは作成でき,すでに作成してあるアロマターゼプロモーターI.4のルシフェラーゼ発現ベクターを用いてレポータージーンアッセイを行った.RORα4による転写活性はRORα1よりは若干弱いことが分かった.
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