研究課題
若手研究(B)
脊柱靭帯骨化症は内軟骨性骨化過程により骨形成・進展をきたし、骨化前線部での細胞分化の調節・制御が本症の病態に深く関与すると考えられる。Wnt/β-cateninは内軟骨性骨化に重要なsignalingであり、脊柱靭帯骨化症におけるWnt/β-catenin signalingの役割について靭帯組織由来の培養細胞、および採取靭帯の脱灰薄切標本を用いて検討した。頚椎後縦靭帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症の手術時に採取した骨化靭帯より得た培養細胞では、β-catenin、Runx2、VEGFのmRNAの発現は非骨化靭帯由来細胞と比較して高値であり、さらにcyclic tensile strainを24時間加えることで、これら因子のmRNA発現は有意に上昇した。またWntおよびWntreceptorの発現はcyclic tensile strainを加えることによって亢進していた。骨化前線部における免疫組織化学的局在を観察すると、β-cateninは石灰化前線近傍の増殖期軟骨細胞、Runx2、VEGFは石灰化軟骨層の肥大軟骨細胞、WntおよびWnt receptorsは未分化間葉系細胞に強陽性であった。これらの結果から、骨化靭帯細胞では骨芽細胞や軟骨細胞の分化・誘導に関与する因子の発現が高値であり、cyclic tensile strainを加えることでこれらの発現がさらに亢進することは、骨形成の促進に関与する1つの因子であると考えられた。また骨化前線の近傍には血管形成とともに未分化な間葉系細胞がみられ、Wnt/β-catenin signalingを介して骨芽細胞へと分化誘導されることが示唆された。
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