研究概要 |
【目的】紫外線(特に UVA-1)は正常細胞と比較し、悪性細胞に対し、より apoptosis 誘導能が高いとの報告がある(Yamauchi R ら, J Invest Dermatol., 122(2):477-83,2004)。また紫外線は有効深度が浅く、粘膜内のみの照射が可能で、筋層・粘膜下組織への影響は少ないと考えられる。我々はこの効果を膀胱癌治療に応用できないかと考えた。さらに新規光感受性物質であるフラーレンにグルコースを付加することで、FDG-PET CTの原理を応用した光感受性物質を開発した。私たちは、膀胱がんの新しい治療法としてフラーレンを併用した UVA-1 による、癌特異的 photodynamic therapy の開発を本研究の目的としている。【方法】膀胱癌細胞株を用いて、UVA-1 照射+フラーレン投与による効果を次のように検討した。1)WST-1 assay による殺細胞効果、2)フローサイトメトリーによる apoptosis 誘導効果、3)Chk1 を中心とした、各種リン酸化抗体による新規細胞内シグナル伝達機構の解析。【結果】1)UVA-1 照射にフラーレンを併用することで、著明な殺細胞効果を認めた。2)UVA-1照射+フラーレン投与により apoptosis が誘導された。3)UVA-1 照射により、Chk1 のセリン345 のリン酸化は起こらないことから、通常実験で使用される UV とは違う経路での apoptosis誘導が示唆された。【考察】膀胱癌細胞株への UVA-1 単照射では、ほとんど効果を認めないが、フラーレンを併用することにより著明な治療効果を細胞レベルではあるが確認した。UVA-1 は広く世の中で人工的な日焼けに用いられており、またフラーレンも化粧品の一成分として使用されている。これらのことから UVA-1 やフラーレンの人体への安全性が保障されていることから、十分に臨床への応用れが可能な治療法であると考えられた。
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