研究課題/領域番号 |
22791546
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
産婦人科学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西尾 浩 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (90445239)
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研究期間 (年度) |
2010
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2011年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2010年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 卵巣癌 / 免疫逃避 / 腫瘍免疫 / 免疫抑制サイトカイン / 骨髄由来抑制細胞 |
研究概要 |
婦人科がんの中でも特に、卵巣表届上皮細胞から発生する上皮性卵巣がんは、サイトカイン産生腫傷として古くから知られている。中でも卵巣癌患者血清や腹水中において、免疫抑制性サイトカインIL6の濃度が亢進し、その予後との相関、cachexiaの誘導、さらに抗腫瘍薬の薬剤耐性との関係が報告されてきた。しかしながら、IL6産生の上流にある分子機構や、IL6以外のサイトカインの産生および免疫抑制細胞の誘導などに関する報告はこれまでわずかであった。そこで我々は、まず、卵巣癌細胞株におけるサイトカイン産生を網羅的に解析し、免疫抑制性サイトカインIL6,IL8,MCP-1高産生の細胞株が存在し、それらがNF-κBの恒常的活性化により誘導されていること、またNF-κBの阻害剤(DHMEQ)によりそれらのサイトカイン産生が抑制されることを解明した。更に末梢血単球から樹状細胞を誘導する系において卵巣癌細胞株の培養上清を用いた場合は、その活性化が阻害されるが、NF-κB阻害剤でpretreatmentしたがん細胞の培養上清では活性化の阻害が解除されることも解明した。また、サイトカイン高産生の卵巣癌細胞株を皮下移植した卵巣癌モデルマウスにおいて脾臓および腫瘍内に骨髄由来抑制細胞(MDSC)がIL-6濃度依存的に誘導され、NF-κB阻害剤の投与によりその誘導が抑制されること、さらに脾臓内の樹状細胞の機能の回復やT細胞抑制因子であるarginaseの活性も抑制されることを解明した。さらに卵巣癌患者の手術検体を用いた免疫染色では、NF-κB(p65)とIL6の発現が正の相関関係にあること、患者血漿中のarginase活性が患者血漿中のIL8濃度と正の相関関係にあることも判明した。これらの結果より、卵巣がんにおいてNF-κBシグナルの活性化は腫傷免疫逃避の根本的原因の一つとなっている可能性が示され、このシグナル伝達経路に対する分子標的治療薬は治療方法として有用である可能性が示唆された。
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