研究概要 |
光刺激が網膜芽細胞腫Y79におけるvascular endothelial growth factor (VEGF)遺伝子発現を誘導することが報告されている。光刺激は酸化ストレスのひとつであり、網膜で誘導されるVEGF は神経保護因子として働くと考えられる。In Vivoでその現象をみるために、サル生体眼においてLED照射前後での前房水と血中のVEGF濃度の変化を検討した。全身麻酔下でニホンザルに白色LED(コンタクトレンズ型)を用いて眼底に光照射を施行した。光照射は8912cdで、8時間連続で行った。光刺激前後で、光照射眼とコントロール眼の房水、血液を採取してVEGF濃度をELISAにて測定した。光照射眼の他眼をコントロールとした。また血中サンプルについてはIL-1., IL-6, TNF-., IL-8についてもその発現量を調べた。光照射によって、房水中のVEGF濃度は2.6倍と上昇した(n=3,P<0.05)。コントロール眼のそれは3.6倍であった(n=3, P<0.05)。 光刺激前の血中VEGF, IL-1., IL-6, TNF-., IL-8はそれぞれ15.6未満、0.23, 0.3未満, 0.55未満,155 (pg/mg)であり、光刺激後のそれは46.5, 0.868, 8.03, 0.05未満, 182(pg/mg)であった。光刺激によって血中VEGF, IL-1., IL-6濃度が上昇した。In vitroで証明されている網膜光刺激のVEGF遺伝子の誘導は、サル生体眼でも証明された。さらに刺激を行っていない他眼においてもそれが確認された。光刺激は眼局所のみならず、全身に影響を与えるような炎症を惹起することが示唆された。
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