研究概要 |
血管透過性の亢進は重症患者に共通する病態であり,過剰な炎症性サイトカインを中心とする各種mediatorの放出を契機に血管内皮細胞が障害される結果出現すると考えられている.しかし,血管透過性を直接制御するmediatorに関する研究はこれまでほとんど行われておらず,機序の詳細は不明である.本研究は血管透過性の亢進がその病態において中心的役割を果たす代表的疾患であるARDSにおいて,血管透過性更新に関与することが予測されるIL-6, angiopoietin-1,2およびVEGF等のmediatorを測定し,臨床病態との相関や各因子間の関連を検討し,さらに各種治療によりどのような変化が見られるかを明らかにすることを目的としている.昨年度はARDSを始めとする,集中治療室に入室した重症患者において,経時的に採血し,代表的炎症性サイトカインであるIL-6の血中濃度の迅速測定と,血清の保存を行った.また,臨床経過について記録を行い,各種重症度スコアの算出などを行っている.また,血管透過性の指標として,熱希釈法により,肺血管外水分量(Extra Vascular Lung Water ; EVLW)や肺血管透過性係数(Pulmonary Vascular Permability Index ; PVPI)を測定し,さらに放射線科,呼吸器内科と合同でCT画像を用いた透過性や肺水分量の評価法を検討している.Angiopoietin-1,2およびVEGFについてはELISAキットを購入し,現在検体の整理などを行い測定準備中である.今後,これらの値の関連性や各種治療に伴う変化などについて検討を行っていく予定である.
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